Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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ピラミッド社会の崩壊

 「選択と集中」と呼ばれる経営手法は、三角形で構成された「ピラミッド社会」を崩壊させ、多くの中流階級を消滅させた、俗に言う「勝ち組・負け組」と揶揄される2極分化社会を将来させる。

 選択と集中とはアメリカが進める「経済のグローバリゼーション」から必然的に導かれる経営理論であり、簡略に言えば、もてる経営資源を、もてる最も競争力を有する技術・製品に「選択的に集中して投資する経営方法」である。
 この経営思想の行着くところは、業界トップ3以内にならなければ企業存続が危ういというものであり、GEの元会長兼CEOのジャック・ウェルチが最初に提唱した「アイデア」である。

 現在、世界は「このアイデア」に則って、業界3位以内に入るべく、各業界は合併、整理、淘汰、統合による「企業再編成」を急速に展開している。かかる例は、日本の金融業界を眺めれば一目瞭然であり、現在の統合銀行名を聞いて、その元となった各銀行名をすべて言える人はそう多くはないであろう。

 選択と集中とは、結局は効率を最優先にした考え方であり、この論理に従えば、従来のピラミッド社会を構成する中間部の大きな台形部の面積が消失し、上部の小さい三角形部面積と下部の細長い台形部面積だけとなる。
 つまり、A銀行とB銀行が合併しても、従業員数がA+Bになるわけではなく、あくまでもピラミッド上部の小さな三角形部面積は変らないのである。

 従って、中間部の大きな台形部面積を消失したピラミッドは、上部の小さな三角形部がストンと下に落ち、最下部の細長い台形部の上に乗ることになる。
 ここで下部の細長い台形部として表される面積の意味するところは、俗にニッチ産業と呼ばれる、従業員2、3人の小企業群である。

 つまり、社会は効率化された業界トップ3企業と、小回りのきいたニッチ的な小企業群で構成されることになる。

 だが問題は、消失したピラミッド中間部の大きな台形部面積である。幾何数学で考えれば、その面積は消しゴムで消しましたとでも言えば済むのであろうが、現実社会での面積とは、中間層と呼ばれる人間集団である。

 あの面積は「なかったことにしてくれ」では到底済まないのである・・・。

2004.12.13

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