Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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限りなく原価に近づく経営

 日本のみならず、今後、先進国経済では「デフレ現象」が深刻な問題となろう。

 デフレ現象とは物(モノ)の価格が低下し、お金の価値が上昇する現象であるが、もとを探れば物の供給が増しているのに需要が低下していくという「需給アンバランス」がその原因にある。さらに言えば、社会が物質的に豊になったがゆえに、発生する経済現象でもある。

 デフレ経済では「市場の支配力」が、売手から買手に移行する。世に言う「買手市場」である。今は亡き歌謡界の大御所、三波春男は、かって「お客様は神様です」と舞台の上で手を合わせたが、まさにここに至って、お客様が名実ともに神様にのし上がり、顧客優位の世界となった。

 顧客優位の世界では、例えば顧客1人に対し、売手が5人という構図になるため、売手は過当競争に巻き込まれる。競争に勝つために、各売手は競って価格を下げていくのである。

 売手が「原価を割ってまで売ることができない」ことを前提とすれば、デフレ経済における「市場価格は限りなく原価に近づいていく」ことになる。(もっとも最近では、原価を割ってまで、売るところもあるからこの前提も危ういが・・)

 原価に近づくことは「利ざやが低下する」ことであり、従来と同額の収益を得ようとすれば、よりたくさん売ることが強いられる。しかし、たくさん売ることはまた「たくさんのリスクを抱える」ことに他ならない。

 お客様が神様であるデフレ経済社会はまた「あらゆる経営がハイリスク・ローリターンを強いられる」経済社会でもある。

2004.11.18

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