Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

新たな街

 街の構成にも線から面への転換が顕れている。線の世界である「通り(ストリート)」から面の世界「広場(スクエア)」への転換である。

 今までの街は「目的優先」の線の世界である「通りを中心に展開」されてきたが、最近はその線の世界である通り(例えば、銀座通り、御堂筋、駅前横町・・等々)が衰退し、「遊び優先」の面の世界である広場(例えば、各ショッピングスクエア、軽井沢アウトレット、豊科町スワンガーデン・・等々)が郊外に向けて急ピッチで展開している。

 通りは、線の両側に目的(例えば、ブティック、レストラン、書店・・等々)が並び、訪れた人は必要の如何にかかわらず「線に添って、順次に」各目的を通過し、出発点である線上の一端から他端に向かって歩き、再びその線上を逆方向に出発点に戻って来る。

 広場は、面のあちこちに目的(例えば、ブティック、レストラン、書店・・等々)が散在し、訪れた人は必要の如何によって「面の全方向、自由に」面上のある出発点から各目的に向かって歩き、その目的からさらなる次の目的に向かって歩き、次々に回遊した後、出発点に戻って来る。

 通りの機能が「直列(シーケンシャル)」であるのに対して、広場の機能は「並列(パラレル)」である。機能比較は「直列で計算処理する従来型コンピュータ」と、現在開発が進む「並列で計算処理する次世代型量子コンピュータ」に類する違いであり、圧倒的に後者の広場機能に軍配があがる。

 本題と外れるので割愛するが、街の構成における線から面への転換を促す他の要因として「車社会(モータリゼーション)」の発展がある。つまり、駐車場問題である。
 従来の線の世界である通りでは、駐車場と各目的との間に「非効率な距離」が発生してしまう。面の世界である広場では、広場中央に駐車場を設けることで、各目的に向かって最短距離を直行することができ、かかる非効率な距離が発生しない。

 何よりも、線の世界である通りでは線の中央に対する線の両端という「にぎわいの端」が存在するとともに、各目的全体の見通しがきかないことである。
 これに較べ、面の世界である広場では広場中央から各目的が放射状に配置されるため、「にぎわいの端」が存在しないとともに、各目的全体の見通しが一目瞭然ときくことである。

 今や、時代は「通りで構成された旧来型の街並み」を置き去りにし、「広場で構成された新たな街並み」に向かって驀進中である。

 さまざまな歴史情緒で彩られた各地の「名物通りで構成された古い街並み」が衰退し、時代の彼方へ去っていくことは寂しいかぎりではあるが、時間の莫大なエネルギで胎動する巨大な「時代の力」には、人力をもってしていかんとも対抗しがたいのである・・・。

2004.11.01

copyright © Squarenet