Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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野に遊ぶ

 線の旅人は点と点の間に引かれた線の上を行く「1次元世界の旅人」である。ここで言う点と線とは、例えば、点とは観光地や名所旧跡等のビュースポットであり、線とはこのビュースポットAとビュースポットBをつなぐルート(道路や線路等)である。1次元世界とは線の世界であり、旅の自由度はその線上を行くか、戻るかの「2通り」しか許されない。

 面の旅人は面の上を行く「2次元世界の旅人」である。ここで言う面とは、例えば、地球の表面である。2次元世界とは面の世界であり、旅の自由度はその面上360度方向「無限に」許される。

 線の旅人は、目的地(点:例えば観光地AやB)を定め、かかる目的地に向かって、しゃにむに街道(線:例えば東海道)を急ぐ旅人である。

 面の旅人とは目的地(点:例えば観光地AやB)を定めず、街道(線:例えば東海道)をはずれ、雲の流れるまま、気の向くまま、あちこちと回遊する旅人である。

 線の旅人が街道(線)より目的地(点)を重要視するのに対し、面の旅人は逆に目的地(点)より街道(線)を重要視する。大別すれば、線の旅とは「目的達成への旅」であり、面の旅とは「自己充実への旅」である。

 戦後始まった高度経済成長社会の中で、日本人はしゃにむに宿場から宿場へと「街道を急ぐ」線の旅人であった。しかし、その経済成長も一段落し、当初の目的もある程度達成されたこれからは、街道をはずれ「野に遊ぶ」面の旅人の姿が、地球表面のそこかしこに散見されることになるであろう。

2004.10.28

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