人類は膨大な試行錯誤を経て、合理性と利便性に富んだ鉄壁なシステム社会を構築した。
だがその構築により、そのシステム社会を構成する各々の人間から動物本来がもつ本性(野生)を欠落させてしまった。
システム社会構築の目的が、人間生活の野生からの脱皮であった以上、それは必然の帰結でもある。野生を喪失した動物とは、換言すれば、飼い慣らされた畜獣を意味する。衣・食・住の生活環境の安全と安定は保証され確保されはしたが、縦横無尽に張りめぐらされたシステムという目に見えない檻の中で生きなければならなくなってしまったのである。(一般にこのような生活を我々は「文化的生活」と呼んでいるのだが・・・)
ふと野生が目覚め、荒野が恋しくなり、檻からの脱出を試みようにも、この目に見えないシステムの檻からの脱獄はそうたやすくはない。例えて言えば、「アルカトラズ刑務所」からの脱獄に等しい。
アルカトラズ刑務所を脱獄するには、決して刑務所長に逆らってはならず、巧みにへつらい、巧みに妥協し、飼い慣らされた看守に巧みになりすますことである。迫真の演技力が必要とされる。嘘か誠か定かでないような演技力であり、極言すれば、自分自身をも騙すような演技力である。さらに、それに運が加われば、この難攻不落の刑務所からの脱獄は成功するであろう・・・。
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