Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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宇宙のゆらぎ
 現代物理学は「宇宙のゆらぎ」に着目している。詳しくは「1/f のゆらぎ」と呼ばれるゆらぎであるが、その特性について考えてみる。

 人間が物を手に持って、重さを確認しようとする場合、物を持った手を上下に振って、その重さを計る。物を持った手を静止させて、その物の重さを確認しようとすると、何故かしっかりとした重さを感ずることができない。言うなれば、この上下に振る運動がゆらぎの運動である。
 同様に人間の目は、小刻みに振動しているが、この振動を止めてしまうと何も見えなくなると言われる。網膜に映った像が、細かくゆらいでいないと、物体の実像をとらえることができないのである。

 テニス競技で、サーブレシーブする選手が、小刻みに体を左右に揺らしているのも、昆虫が触覚を小刻みにあらゆる方向に揺らしているのも、蛇が長い舌をひらひらと揺らしているのもまた、同じゆらぎの運動である。

 これらのゆらぎ運動は、来るべき「未来を予測しようとする働き」をもつと言われる。

 それは、盲人が歩行する時に、進むべき方向に対して、もった杖で足下の地面のあちこちを叩き、進路上の障害を予測するのと同じである。この杖のゆらぎがないと、盲人にとって、全く未知で、不確定な空間である路上を、安全に歩むことができないのである。

 来たるべき未来に対して、我々もまた、この盲人と何ら変わることがなく、全く未知で、不確定な状態に置かれているのである。盲人の杖のゆらぎに対応する、未来を予測するための、何らかのゆらぎ手段がなければ、この不確定な空間で、安全に生きていくことはできない。

 つまり、昆虫は触覚を揺らし、蛇は舌を揺らし、テニス選手は体を揺らし、未知なる未来を予測し、手探りしているのである。

 これらのゆらぎは、可能性の海である全体宇宙としての暗在系から、明在系である現実宇宙が実在化しようとする際に発生する「根源的ゆらぎ」に起因する。有と無の狭間に発生するゆらぎ現象である。

 かくして、地上を渡る風しかり、経済の胎動しかり、・・しかり、この世の万物事象はすべて、次に象出する現実世界を予測するために、ゆらいでいるのである。

2003.7.03

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