人間の意識は多種多様であるが、その多様な意識に対し、ある特定意識の意識をのみ使う、意識の普遍化は徒労に終わる。
この世において、意識から考えられたものが、唯一意味をもつのは、それが物的な力となって顕れた場合である。
アインシュタインの相対性理論も、彼の特定意識から構築された認識だけであったのであれば、多種多様の多くの意識に、影響を及ぼすことは無かったであろう。
その認識が、この世に、物的な力を多大に及ぼしたがゆえに、多様な意識に絶大な影響を与えたのである。
この世において、意識の普遍化を試みるならば、その特定意識の力を、物的な力に有効に変換しなければならない。
人間が他の動物と異なることは、無限の意識世界をもち、この無限の世界を開拓することができる点にある。人間はこの意識世界の王者になれる唯一の可能性をもった動物である。
換言すれば、この世における真の王者とは、この世にあらゆる物的な力を波及させることが可能な、意識世界の王者ということになる。
この王者から眺めれば、物的世界の王者と言えども、赤子のごとくの存在であり、世で言う億万長者は地に落ち、絶世の権力者も道化と化す。
この世の賢者とは、この構図を充分に理解している者のことである。彼らは物的世界の表面には顕れず、多様の意識で構成された人間社会の価値観にさらされることがない。
したがって、賢者は物的な力に有効に変換されない戯言などは口にせず、物的世界を冷静に観察する。しかして、機が到来した刹那、瞬時に意識的な力を物的な力に変換させ、この世に効果的に作用させるのである。
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