この宇宙が対称構造をなすPairpole宇宙であることは常に正誤、禍福、善悪、良否・・等々の2つの対称性の存在を保証する。
正の世界と誤の世界は共存し、禍の世界と福の世界は共存し、善の世界と悪の世界は共存する。
従って、常日頃、我々が口角泡を飛ばして議論する「あれか・・?、これか・・?」という二者択一の思考法は意味を成さない。
あれとこれは共存するのであって、あれだけや、これだけの世界は存在しない。
換言すれば、あれとこれが一体となった「合計0の世界」である。
この合計0の宇宙法則を見抜いた思想家は古代中国に生きた老子、荘子であろう。
老子の「無為自然」とは、人間ははかりごとを為さず、ただただ自然に生きるのが最良であるとする思想であり、荘子の「無用の用」とは、およそこの世に無用なものなどはなく、すべてが必要な有用なものであるとする思想である。
この老荘思想はPairpole宇宙の構造をよく表現している。
もっとも老子、荘子はPairpole宇宙などという言葉は使わずに、その構造のことを「道(タオ)」という言葉で表現した。
だがここで重要なことがある。
結果0の宇宙法則はともすると「何をやっても結局は同じで、意味が無い」という虚無主義(ニヒリズム)に人間を導くおそれがあるということである。
人間は馬鹿を承知でこの世をおもしろ可笑しく生きなければならないものでもある。
維新の英雄、高杉晋作がこの世の去り際に遺した「おもしろき事のなき世をおもしろく・・」という辞世の句はこの間の状況をよく伝えている。
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