時間の統制下で因果律認識を発展させて構築した現代物質文明社会は今大きな混迷に遭遇している。
因果律認識の根本を成す「機能」という価値観が人間を社会システムの「構成要素」に変質させ、機械メカニズムと同様な単なる「部品」のような存在にしてしまった。
人間の尊厳は著しく貶められ、個々人は自虐的に自己の存在を否定しつつある。
この状態から人類が解放され、再び人間本来の尊厳を取り戻す「鍵」は「時間の呪縛」からの脱出にある。
時間は「空間変化率関数」であり、言うなれば「数学的概念」である。概念とは手に触れたり目撃できるような実在的な実体ではなく人間意識が構築した抽象的無形な認識である。
時間が人間意識により構築された概念であるとすれば、その時間概念で構築された「過去」や「未来」もまた人間意識が構築した「概念」であり、実在するか否かは不確かなものとなる。
我々が唯一、手に触れ目撃できる実在とは「現在」だけであり、これを疑うことはできない。
この疑うことのできない現在という刹那宇宙がより解明されれば、長期間にわたり人類を拘束してきたこの「時間の呪縛」から解放される道筋が観えてくる。
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