物質宇宙ではこれを越える速度が存在しないことが、アインシュタインの相対性理論の根拠であり、この光速度が物質宇宙の特異点である。

　この光速度を越える存在が実証されたとたんに、現代人が確固たる存在であるとする物質宇宙は崩壊する。

　しかし、意識の速度はこの光速度をかるく突破する。というよりは速度は無限大であると言える。いくら離れている空間へも意識は瞬時に到達するように観える。

　速度が無限大という状態を還元すれば、速度の概念を構築する「時間」が存在しないということである。速度とは移動距離を移動に要した時間で割り算したものであり、速度が無限大ということは移動に要する時間が０であることを意味する。つまり、時間が存在しない。

　これは前述した歴史作家、司馬遼太郎氏の歴史認識と同質である。時系列で「連なった歴史空間」ではない、同時系列で「重なった歴史空間」を意味する。

　つまり、意識宇宙には過去も未来も存在せず、現在という世界に一体的に過去も未来も重なって存在しているという構図である。

　また速度が無限大とは、意識宇宙には遠い近いという距離間も存在しないことを意味する。

　では何が存在するのか・・？

　それは私著「Pairpole（物質編）」の帰結に近づく。つまり、意識宇宙には「大きさ」という空間概念は存在せず、「仕組み」というシステム概念のみが存在する。

　以上を統合すれば以下のように還元される。

　「意識宇宙には過去も未来もなく（つまり、時間がなく）、ただそれらが重なった現在だけがある」

　「意識宇宙には遠い近いもなく（つまり、空間がなく）、ただそれらが重なった仕組みだけがある」

　光速度を基本とする物質宇宙では時空間は時系列で連続しており、意識を基本とする意識宇宙では時空間は同時系列で重層している。

　物質宇宙とは、意識宇宙の「同時系列で重層している時空間」が瞬間、瞬間・・と我々が認識できる「形」でこの現実と呼ばれる世界に象出することにより実在場を構築し、この瞬間が連続することで我々に時間という概念を発生させ、「時系列で連続している時空間」を認識の中に構成することにより存在している世界かもしれない・・？

　この構造は物理学者デビット・ボームが言う「宇宙の暗在系と明在系の構造」と同質である。