武士、騎士、義士・・等々。 士とは何か・・?
現代物質文明社会はこの「士」を問わなくなって久しい。おそらく現代社会自体がこの士を必要としなくなったのであろうが、記憶の彼方にはこの士への憧れと畏敬の念がいまだ存在している。
「忠臣蔵」で有名な赤穂義士が長い歴史空間の中で幾度となく芝居や映画で再演されてきたことがこの念への希求の強さを物語っている。
士とは現代社会が価値観とする機能的価値観や金銭的価値観の尺度で述べられるものではない。それは多分に精神的価値観の価値尺度であり、現代社会でちやほやされる大富豪、有名人、権力者・・等々が必ずしも士であるということではない。現代社会ではどちらかと言えば、士に一番遠い存在であるかもしれない。
かっての日本では貧乏長屋に住む大工の棟梁が士であったし、傘はり内職をする食いつめ浪人が士であった。士とは物質的豊かさに何ら関係しない精神的豊かさである。
日本の武士、西洋の騎士の中に漂う士の精神とは「自立」、「高潔」、「凛然」、「畏敬」、「静謐」、「優雅」、「毅然」・・等々、これらの言葉に集約される価値観である。人間が単なる物質的物体に成り下がってしまった現代において、この「士の登場」が強く希求される。
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