Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知のワンダーランドをゆく〜知的冒険エッセイから
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お天道様は見ている
 自然界には自己修復能力(あるいは自己再生能力)が内在している。例をあげれば、空気中の酸素濃度は21%であるが、この濃度は常時一定に保たれている。地表のどこかで大量に酸素を消費しても、自然がどこでそのことを察知するのかは明らかではないが、片や地表のどこかでその消費量に見合う酸素を発生させているのである。それはとある森林が伐採されて酸素の供給量が減っても、片やとある海辺で藻が繁殖してその減じた酸素量を補うようなメカニズムである。
 このような制御メカニズムを人工的に創ろうとしてもあまりに制御系が複雑多岐に渡っていてできるものではない。それは温室効果ガス(炭酸ガス等)の排出による地球温暖化をいまだに人類がコントロールできていないことをみれば明らかである。
 以上から類推すれば、今起きている異常気象と呼ばれるさまざまな現象もまた、自然界が実行している自己修復メカニズムのなせる業との考えに至る。このような自己修復能力は自然界にとどまらず宇宙全体に潜在されている内臓秩序である。社会学や経済学ではこのような自己修復能力を「神の拳」と表現している。さまざな社会経済の混乱も最後は人知を越えた神の拳が下す鉄槌によって解決されるという考えである。西欧の「神の拳」は、東洋では「天の理」と言い換えられる。日本では古来より「お天道様は見ている」という素朴な表現が使われてきた。
 今、我々は現代社会が直面している混迷の行き着く先をしかと見通すことはできない。はたまた我々の能力をもってして、かくなる難問が解決できるのかもさだかではない。だが宇宙の内臓秩序としての自己修復メカニズムはあきれるほどに勤勉に、おそろしいほどに公正に、あくことなく実行されていることだけは確かである。
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