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ビジョンウィンドウから眺める信濃の四季

窓の向こうに世界が見える〜信州つれづれ紀行から
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佐久平からの浅間山(2) / 長野県北佐久郡御代田町
佐久の草笛 / 望遠ウィンドウ
 佐久平から軽井沢に向かう途中、車を路側によせて撮った浅間山である。晴れてはいたが寒風が休耕地の上を吹き抜けている。ふと島崎藤村の「小諸なる古城のほとり」の詩情が思い浮かんだ。
小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ
緑なす はこべ は萌えず 若草も藉 ( し ) くによしなし
しろがねの衾 ( ふすま ) の岡辺 日に溶けて淡雪流る

あたゝかき光はあれど 野に満つる香 ( かをり ) も知らず
浅くのみ春は霞みて 麦の色わづかに青し
旅人の群はいくつか 畠中の道を急ぎぬ

暮れ行けば浅間も見えず 歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて 草枕しばし慰む
 藤村ならずとも、この雄大な浅間山を見上げる者は、かくなる詩情が彷彿とその胸中に去来するにちがいない。
文・撮影 / 柳沢 健
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