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ビジョンウィンドウから眺める信濃の四季

窓の向こうに世界が見える〜信州つれづれ紀行から
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豊科近代美術館 2006年 / 長野県安曇野市
空間に魅せられて
 豊科近代美術館の広い芝生の前庭を随分と気に入っていた私は、その前庭が、いわゆる「箱物」で占領されてしまったことに落胆してしまった。美術館は単に外観に優れ、館内に展示された作品が素晴らしければそれでよいというものではない。美術館とは人類が過去に営々と築き、蓄積してきた文化の「象徴」なのであって、今を生きる我々が、その「象徴」を敬い、大切にする「気持ち」が重要なのである。あえて誤解を畏れずに言えば、その文化の象徴である美術館が付帯する「周囲の空間」こそが「美術館そのもの」であって、中に何が入っていてもいいのである。人はその文化が薫る「空間に魅せられ」て、集い、遊び、逍遙し、普段は考えないような高尚な事柄について考えるのである。ことわっておくが、私はけして箱物が悪いと言っているのではない、その箱物が「付帯すべき空間」と「醸し出す薫り」を大切にして欲しいと言っているのである。
 2006年に撮影したカットと今回(2010年)撮影したカットの両方をご覧いただき、豊科近代美術館が、いったい「何を得て」、「何を失った」のか ・・ 考える「よすが」となれば、撮影者として、もって幸甚である。
文・撮影 / 柳沢 健
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