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ビジョンウィンドウから眺める信濃の四季

窓の向こうに世界が見える〜信州つれづれ紀行から
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さぎり荘 ふれあい公園 / 長野県長野市信州新町
置き忘れた風景
 国道19号はかっては松本と長野を結ぶ唯一の幹線道路として行き交う車で混み合っていた。長野自動車道が開通してからは、めっきりと交通量が減り、いつしか地元の人以外は使うこともなくなってしまった。
 連休最中の晴天日、久しぶりに松本から長野に向けてこの国道を走行した。山清路のダム湖を過ぎ、犀川に沿ってつけられた2車線道路をのどかな気分でぼんやりハンドルを握っていた私の視界に、対岸の広い緑地が飛び込んできた。それは山間僻地の谷あいには似つかわしくないものであり、興味に引かれて対岸に渡る橋を見つけて寄ってみた。
 あとで知ったことであるが、このあたりは「信州新町ジンギスカン街道」と呼ばれていて、施設はジンギスカン・サフォークが味わえる宿を中心にした「ふれあい公園」であった。園内にはパターゴルフ場、屋内ゲートボール場、遊園地等々が配され、人々はのんびりとした憩いの時を過ごしていた。交通量が減ったことは、この地の人々にとって「あるいはよかった」のかもしれない。
 撮影するカメラの前を、つれ合いに手を引かれ、杖を突きながら、老夫婦が行きすぎていった。太陽は中天にあって、じりじりと広場全体を照りつけている。その風景は、「どこかで」日本が置き忘れてきたような、あるいは隠されるようにして「どこかに」存在する桃源郷のような風情が漂っていた。
文・撮影 / 柳沢 健
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