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未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事

信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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森将軍塚古墳 / 長野県千曲市
今なお睥睨する
 前回と同様にあんずの里からの帰路、森将軍塚古墳を高台に望む「科野の里歴史公園」に立ち寄った。森将軍塚古墳は埴科古墳群に属する4つの前方後円墳のひとつで、その規模は長野県最大の全長100メートルに及び、石室は東日本最大級の大きさを誇っている。長野県における前方後円墳としては最初期にあたる古墳時代前期の今からおよそ1600年ほど昔に造られた当時の科野(信濃)のクニを治めていた王の墓と考えられている。
 地上140メートル程の高さにある狭隘で急斜面の曲がった尾根上に築造されたことで左右対称ではなく後円部が楕円形に近く、前方部と後円部では中軸線が20度ばかり違っている。墳丘は葺石で覆われ、三重の埴輪列のほか、墳頂には形象埴輪が配されていた。
 前回は諦めていたその墳墓への登頂を今回は目指した。つづら折りの坂道を登ること30分ほどで行き着いたがもはや若くない身には少々こたえる登坂であった。古墳は当時そのようにあったとおりに再現されていた。後円部に立っての眺めは善光寺平を眼下に一望する絶景であった。かくなる眺望をまくらにして黄泉へと旅立った森将軍の心根はいかなるものであったのか、平成の今もなお科野(信濃)のクニを睥睨してもろびとの行く末を見守っているのであろうか ・・ 思いはそのことであった。

2017.04


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