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未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事

信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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清里高原 / 山梨県北杜市高根町清里


八ヶ岳高原ライン / 東沢大橋(赤い橋)


清泉寮 / 八ヶ岳を望む


清泉寮 / ポール・ラッシュ像
新緑の山麓
 5月の風に誘われるようにして八ヶ岳山麓に広がる清里高原を訪れた。
 その日の第1カットは八ヶ岳高原ラインの「赤い橋」で知られる川俣川東沢渓谷地獄谷に掛けられた東沢大橋を前景にした新緑の八ヶ岳山麓である。過去幾度かこのカットを撮っているが、その風景には寸部も違いがない。ただ以前には撮影場所に建っていたドライブインが、今では取り壊され広い駐車場となっていることが時の経過を感じさせる。
 第2カットは清里高原の中心に位置する清泉寮である。昨年の12月(第417回)にここを訪れているが、そのときは人影まばらであったが、今日はツツジも赤く咲き、多くの観光客で賑わっている。第3カットはそのときに撮り落とした、遡る80年近くまえ、この清泉寮の建設を画したアメリカ合衆国、ケンタッキー州出身の牧師、ポール・ラッシュ博士の銅像である。
 帰路、博士の遺骨が納められている清里聖アンデレ教会によってみた。その日は訪れる人もなく、あたりは昼下がりの静寂に包まれ、穏やかな陽射しが地面に木陰を投じていた。博士が最後に遺した物とは、聖書と万年筆、何着かのスーツ、そしてパジャマと歯ブラシだけであったという。家庭も持たず日本への無償の愛に殉じた博士の生涯であった。
2016.05

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