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未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事

信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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信州の鎌倉をゆく / 信濃デッサン館 / 長野県上田市前山
黙して語らず
 中禅寺から独鈷山の山裾を東に少し行くと前山寺に至る。前山寺は中禅寺と同様に真言宗智山派の寺である。その山門近くにこの信濃デッサン館があるとは各種学芸の綜合的教育を目的とした「綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)」を創設した弘法大師空海の事績を想起させるに充分なはからいであった。
 空海は三筆(空海・嵯峨天皇・橘逸勢)と称される日本を代表する能筆家であるとともに曼荼羅図をはじめとする芸術家でもあった。今で言えばアートディレクターのような人物である。
 この美術館で日本の野獣派(フォーヴィスム)を代表する村山槐多の作品を眺めたのはいつのことであったであろうか。ほとばしる情念や不安を反映した槐多の作品は一度見たら忘れることができないほどに強烈である。10代でボードレールやランボーに心酔、デカダン的な生活、貧しさや失恋の中に青春をおくった槐多は22歳の若さで夭折している。最近は訪れる人が少ないと聞いたが晩秋の静謐に包まれた美術館の風情はその趣を秘めて黙して語らない。
2015.11

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