Linear ベストエッセイセレクション
ライフスタイルの変遷〜新たなライフスタイルとは
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手づくりライフのすすめ
 少し前に 「スローライフ」 という言葉が流行した。
 スローライフとは戦後始まった経済の急激な成長の中で営まれたわき目もふらない 「ハイスピード」 のライフスタイルを脱して、ゆっくりとした 「スロー」 なライフスタイルに生活様式を変えようとするものである。 確かに生活のスピードをおとすことも人間が豊に生きることにおいては必要なことではあるが、単に 「ゆっくり生きることのみ」 をもって人生が 「生き甲斐のある意義あるもの」 になるのかどうかは疑問である。
 「手づくりライフ」 とは言うならば 「既製ライフ」 の反対概念である。
 高度経済成長下で展開したのはハイスピードの経済成長だけではなく、同時に事物の標準化もまた進展した。 製品をローコストで大量に生産するにおいては製品や技術等の標準化は必要不可欠の機能である。 この標準化への邁進がまれにみる経済的成功をもたらしたのであるが、同時に、一方で 「人間性疎外」 という大きな弊害もまた日本社会の津々浦々にもたらしたのである。 人間性疎外とは分かり易く表現すれば、「人間の部品化現象」 である。 経済社会発展を支えた標準化思想の裏側で、人間の 「存在意義」 がその成長を達成するための 「巨大機械」 を構成する 「ねじ」 や 「歯車」 のごとき 「機械部品」 の地位に貶められてしまったのである。
 かくなる機能社会で蔓延したライフスタイルが 「既製ライフ」 というライフスタイルであり、既製ライフとはすべてが標準化された 「おし着せ」 の生活様式である。 自らのライフスタイルを自己の個性や好みで選ぶのではなく、しいて言えば、それぞれの 「年収に応じたライフスタイル」 という既製服がデパートの衣料品売場に並べられていて、我々は、ただ単にそれを着させられたにすぎないという構図である。
 2007年からは、かかる日本の高度経済成長を支えた 「団塊の世代」 と呼ばれる人たちが大挙して退職(リタイア)して来る。 俗に世に言う 「2007年問題」 である。
 団塊の世代の今後のライフスタイルが 「スローライフ」 になるのか、はたまた 「手づくりライフ」 になるのかは議論の分かれるところであるが、私は 「手づくりライフ」 のライフスタイルをすすめる。 なぜなら団塊の世代が自らの 「セカンドライフ」 として、今までのおし着せの生活様式を脱して、既成概念にとらわれない、自らの意思と、自らの手で、自らの生活をつくりあげるという 「手づくりライフ」 を目指すならば、「オンリーワン」 の個性に輝いた 「本当の意味での繁栄」 が日本に到来すると思うからである。

2006.01.25

勝手ライフのすすめ
 その後の経過を眺めれば確かに 「スローライフ」 よりは 「手づくりライフ」 のほうが普及したようにみえるが、手づくりライフを裏打ちしていた 「オンリーワン」 の価値観が変遷してしまった現在ではその 「手づくりライフ」 のライフスタイルにも修正が迫られている。
 地元紙のエッセイ欄で 「ナンバーワンからオンリーワンへ」 を書いたのは2000年1月のことである。 その稿は、戦後長く続いたしゃにむに頑張る 「ナンバーワンの時代」 は終わりを告げ、これからは個性と余裕をもった 「オンリーワンの時代」 が到来するであろうとの期待を込めて書かれたものである。
 2017年3月時点である今の現状を眺めれば、確かに個性は多様化してオンリーワンが実現したかにみえるが、そのオンリーワンに余裕があるようにはみえない。 それどころかオンリーワンの周辺は日増しに喧噪が激しくなり慌ただしくなっている。 かえってオンリーワンが 「ナンバーワン化」 しているようにさえみえる。 米国のトランプ大統領は確かに 「オンリーワンの個性」 をもった大統領ではあるが、その影響力は 「世界ナンバーワン」 である。
 ナンバーワン から オンリーワン への移行を可能にしたのは情報化時代を推進した情報化技術の進歩であったことは誰もが否定しないであろう。 それはトランプ氏のオンリーワンを 「大統領のナンバーワン」 へと移行させたものが 「インターネット」 という情報技術であり、「ツイッタ」 という情報伝達ツールであったことを考えれば素直に了解されよう。 オンリーワン が ナンバーワン になることなど 「ナンバーワンからオンリーワンへ」 を執筆した当時には思いもしなかったことである。 トランプ大統領までが世界に向かって 「つぶやく」 ともなれば 「オンリーワンの価値観」 どころの話ではない。 「事実は小説より奇なり」 とはこのことである。
 かくして大国の大統領までが 「オンリーワンの手づくりライフ」 を踏襲するようになった今、新たなライフスタイルとしていかなるものが創造されるのか?
 少々 自虐的 かつ 脱力気味 ではあるが、究極の自由主義を目指した 「勝手にやらせて頂きます」 といった価値観に基づいたライフスタイル 「勝手ライフ」 などはどうであろう? 曰く 「勝手ライフのすすめ」 である。

2017.03.29


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