Linear ベストエッセイセレクション
中島みゆきの風景
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君よ、永遠の嘘をついてくれ
 「永遠の嘘をついてくれ」は50歳を前にして全く曲が書けなくなった吉田拓郎が自分の「最後の曲」として中島みゆきに提供を依頼したものである。
 この唄の主唱(メッセージ)は「永遠の嘘をついてくれ」と連呼する以下の部分(抜粋)にある。
なのに永遠の嘘を聞きたくて 今日もまだこの街で酔っている
永遠の嘘を聞きたくて 今はまだ二人とも旅の途中だと
君よ永遠の嘘をついてくれ いつまでもたねあかしをしないでくれ
永遠の嘘をついてくれ なにもかも愛ゆえのことだったと言ってくれ
 事の経緯をネット情報を基にかいつまんで構成すれば以下のようである。
 若き日の吉田拓郎の曲はメッセージ性が強くそのメッセージが多くの若者に影響を与えたと言われている。当時、北海道帯広の高校生であった中島みゆきもそのひとりであった。中島みゆきにとっての吉田拓郎は「カリスマ」であり、学生時代はミニスカートをはいて拓郎の楽屋に押しかけたり、ついにはその吉田拓郎を追ってデビュー、「女拓郎」と呼ばれるほどに心酔していたのである。だがその後、発信したメッセージの意味を尋ねられた拓郎は真意はともかく「ああ、あれは全部ウソだよ」と公然とうそぶく。 「最後の曲でないのであれば」を条件に提供を引き受けた中島みゆきがこの曲に注ぎ込んだ思いとはそのメッセージに対する「嘘ならうそで構わない それならば永遠にその嘘をつき続けてくれ 永遠に吉田拓郎は吉田拓郎であってくれ 決して弱音など吐かないで欲しい」という激しい女心であり、夢中だった若き日への哀憐であった。
 中島みゆきにしたらあるいはそれは「今さら何言ってんだよ 男なら男らしく ぐだぐだ言わずに 誇り高く生きろよ」という憤りであったのかもしれない。
 圧巻は今や伝説となっている「野外ライブコンサート つま恋 2006」で訪れる。
 吉田拓郎のステージに予告なく突然現れた中島みゆきが拓郎と「永遠の嘘をついてくれ」を熱唱したのである。2人は互いに目をやることもなく歌い続け、歌い終えた中島みゆきは言葉を交わすことなく毅然として去っていった。のこされたステージには自信を取り戻したかっての吉田拓郎の姿があった。
 かくして、再びはないであろうめぐり逢いをはたした「ふたつの魂」は刹那の空間で煌めき、永遠の時空に向かって昇華していったのである。 「君よ、永遠の嘘をついてくれ」の願いとともに ・・・。

2017.01.21


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