Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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旅は彗星のごとく
 日常と非日常。 時代は長らく変化に富み刺激に満ちあふれた非日常を探し求め追い求めて来た。 それらが高度経済成長の潮流となって現代の繁栄をもたらしたのである。 戦後生まれの団塊の世代の多くはこの非日常の世界に生きてきたのであって、当然にして培われた価値観もまた非日常の価値観のうえに構築されたものである。 集団就職列車で地方から都会を目指した若人達の旅は、あるいは 「日常から非日常に向かう旅」 であったのかもしれない。
 だが 「過ぎたるは及ばざるがごとし」、行き過ぎた非日常も極まれば反転するのは 「宇宙の理」 である。 その旅が非日常の都会から日常の地方へ反転するに何ら不思議はない。 帰り着いた世界は変わりばえのしない日常の継続かもしれないが、そこには静かな時間がゆっくりと流れる充足の日々がある。 それを 「桃源郷」 と呼んでもあながち違和感は感じられない。 旅は彗星のごとく遠大な周期を描いてもとからあったその理想郷に回帰したのかもしれない。 巷間言われるごとく 「幸せの青い鳥は山のあなたの空遠くではなく、自らの窓辺に憩っている」 のである。

2020.09.14


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