Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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魂の死するを恐れる
 以下の記載は三島由紀夫が死の1週間前(昭和45年11月18日)に語った遺言のような声明である。
 資本主義的な制度の責任によってもたらされた 「道徳意識の麻痺」 に対抗しえる手立てを見出だすことのできない 我々の戦後民主主義が立脚している人命尊重のヒューマニズムは ひたすら肉体の安全無事を主張するが 魂や精神の生死を問わないのである。 社会は肉体の安全を保障しようとするが 魂の安全を保障しはしない。 心の死ぬことを恐れず 肉体の死ぬことばかりを恐れている人達で日本中がうめられている。 しかし、そこに肉体の死するを恐れず 「魂の死するを恐れる」 という人がいることを忘れないでください。 そして、そのような人がいるからこそ 「道徳的緊張」 とでもいうべき格調の高い清き泉のような精神史的潮流が育まれて行くのです。
 三島由紀夫の 「憂国の声明」 については 第713回 「三島由紀夫の予言」 でも掲載している。 ここで合わせて読まれれば三島由紀夫が何を訴えたかったのかが明瞭になる。 もし三島が生きていたら今の日本の現状を見て何と言うのであろうか? 昭和は遠くなりにけりの嘆息ひとしおである。

2018.05.25


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