Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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あるとないの存在証明〜夢のまた夢
 私の外に広がった物質的な外的宇宙空間と私の内に広がった意識的な内的宇宙空間の大きさを計ってみてもそう大きな意味の違いは生じない。
 外的宇宙空間の大きさは人によってことなるが、ビックバン理論に基づいた宇宙の大きさで言えば、138億年まえに起きた大爆発(ビックバン)から始まった膨張宇宙の大きさは「光より速く進むものはない」とする相対性理論の帰結から考えれば138億光年の大きさということになる。
 だがその大爆発のまえにあった宇宙は解明不能であって、その大爆発がいかなる宇宙を「背景」として発生したのかを考えれば、宇宙の大きさはさらに拡大する。さらにその背景宇宙の背景宇宙を考えれば、宇宙の大きさはとめどなく拡大していき ・・ 究極までいってもきりがない。
 きりがあると感じている物質宇宙においてこれである。いわんやきりがないと感じている意識宇宙の大きさなど計ることなどとうていできない。
 畢竟。手にさわれる物質宇宙も手にさわれない意識宇宙もその実体は50歩100歩であって意味をなさない。大きさが計れない「もの」を、手にさわれるから「ある」と断じ、手にさわれないから「ない」と断ずるような現代人の「存在証明方法」は何ら証明になっていない。
露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢  (豊臣秀吉 辞世の句)
 「露のようにこの世に生まれ落ち そして露のようにはかなく消えていってしまったこの身であることよ 大阪城で過ごした栄華の日々は 夢の中の夢のようにはかないものだった」という天下人の胸中に去来した感慨は物質的な外的宇宙空間と意識的な内的宇宙空間の構造の何たるかを如実に語っている。

2017.09.26


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