Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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あてにならない世界
 これからの世界は精神世界が中心の世界になろう。その理由はコンピュータ技術の進歩発展によってすべてが物質的な物よりも精神的な情報が優先する社会になっていくことが予測されるからである。
 だが物体的な物はリアルとしての存在感があるが精神的な情報となるとバーチャルであって直接的な存在感は希薄である。あると言えばあるが、ないと言えばないようなものである。勿論、人間は物体的な物であるからしてリアルとして現実世界に存在している。だが情報化社会が発展すればするほどそのリアル感は減少し、やがてはコンピュータゲーム世界の住人のようになってしまうであろう。
 リアルかバーチャルかを分けるものは人間個々に依存した自覚的認識に左右されることになる。もし自己存在がリアルではなくバーチャルであると自覚すれば現実世界から遊離してしまう。この状況は人間にとってかなり危険である。
 その状態とは言うなればある種の精神崩壊の稜線上にいるということである。精神は形無くとらえどころがない。「私はしっかりしている」と言う人であっても、物の存在以上にしっかりしているとは到底言い難い。朝令暮改のごとく、朝方に考えた決心は夕方にはぐらついてしまう。その傾向は情報化社会が進展すればするほど顕著となる。米国のトランプ大統領の精神構造を鑑みればそれは明らかであろう。
 ひとことで言えば、精神世界は「あてにならない」。このあてにならない世界に生きていくのがこれからの人類の未来であるともいえる。
 今先行されなければならないのは「物の開発」より「精神の維持とそのコントロール方法の開発」である。でなければ行き詰まった人類の精神は崩壊し、稜線上から暗黒の奈落へと一気に転げ落ちてしまう危険性さえある。

2017.05.15


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