Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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地図のない旅
 「風に吹かれて」のあと五木寛之は「地図のない旅」を書いている。風に吹かれるように漂白の旅を続けるのが人生であるが、その旅には「地図がない」ということであろう。あるいは地図があったとしても漂白の旅はときとして思いとは逆方向へと行く道を誘ってしまうということでもあろう。
 戦後復興も進み「もはや戦後ではない」と言われた時代、訪れた物質的な豊かさとその豊かさでは救われない精神的な渇望との狭間で青年たちは荒野をめざしたのである。
 また異端の劇作家、寺山修司は1967年の評論集で「書を捨てよ 町へ出よう」と呼びかけ「花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ」と精神の覚醒を促した。
 書をすて 風に吹かれるようにして 地図のない旅に日々を費やし さよならだけが人生だと自らに言い聞かせていた 懐かしき時代の面影は 今も走馬燈のように脳裏に甦ってくる。
 畢竟如何。 今日だって それは同じことなのである。
※)畢竟如何(ひっきょういかん) / 意味 それでどうした? つまるとこ何?

2017.05.05


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