Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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新海三社神社 三重塔 / 長野県佐久市
わが敷島の大和だましひ
 車載のナビで新海三社神社を目指したのであるが、何のことはない、信州の五稜郭といわれる「龍岡城」のすぐ近くであった。龍岡城を訪れたのは、思い起こせば2009年7月のことであった。晴れた夏日の静寂の中で、ここだも鳴いていた「蝉の声」が記憶に残っている。今日はうってかわって梅雨空から霧のような雨が音もなく降っている。
 龍岡城の脇を通り過ぎてしばらく行くと、東の山腹に、新海三社神社が、樹齢数百年は経たであろう、鬱そうと生い茂る杉木立の中、漂う霊気に包まれてたたずんでいた。神社の創始ははっきりとしないが、古くから佐久地方の一の宮として繁栄、源頼朝や武田信玄など、多くの武将の尊崇を受けてきたという。祭神は四柱で東本殿、中本殿、西本殿の三社に祭られている。
 撮影したかったのは「三重塔」なのであるが、神社に三重塔とはめずらしい。一般に塔は「寺の施設」であって、「仏舎利(釈迦の遺骨)」を納めたものである。何ゆえに神仏がここに習合しているのであろうか・・? さらには、その配置が特異である。塔が本殿(東本殿)の真後ろに建っているのである。私もあちこちと神社仏閣を訪れてはきたが、このような例を、ついぞ見ることはなかった。新海三社神社に秘められた故事来歴の物語りが、パズルのように時空の彼方から、現代に問いかけている。そしてまた、境内の一隅に立つ掲示板には、明治天皇御製の一首が掲げられていた。
いかならむ 事にあひても たわまぬは わが敷島の 大和だましひ
 東北大震災にあえぐ日本国民に向けて励まし呼びかける明治帝の声が天から降ってくるようである。
2011.6

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