Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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奥裾花自然園 / 長野県長野市鬼無里
太古の森
 奥裾花自然園は新潟県境に近い裾花川の源流部にあり、81万本余りの「水芭蕉群生地」で、尾瀬よりその規模は大きいという。春5月〜6月上旬頃まで白い清楚な花を咲かせる。園内を取り囲む「ブナの原生林」にはクマやサルなどの野生動物が生息し、今なお「太古の息吹」が漂っている。この地で水芭蕉が発見されたのは1964年(昭和39年)と最近のことであり、それまでは「知る人もなく」悠久の時間が営々と流れていたのである。ちなみに水芭蕉は白い花びらのように見える部分が、実は葉が変化したものであって、花は中の薄緑色をした棒状の花茎についている。
 訪れた日はすでに開花の季節を過ぎていて花は「ちらほら」としか見ることはできなかったが、この列島に居住した縄文人の彼らが、おそらくは最も好んだであろう「ブナの木」から発せられた自然の生命力を全身に浴びて、太古の時空に「巡り逢う」ことができたのが、何にましても代え難いことであった。だが、この温帯を代表する落葉広葉樹、ブナの森も、秋田県と青森県にまたがる白神山地が、世界自然遺産に登録されたごとく、世界的に稀少となっていて、今や絶滅の危機に瀕している。
2011.6

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