Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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軽井沢石の教会 / 長野県北佐久郡軽井沢町
対称性人類学
 ・・・ 軽井沢の自然をこよなく愛した明治・大正期のキリスト教者内村鑑三。「軽井沢石の教会」は「神が創造した自然の中にこそ祈りの場がある」という無教会思想から生まれた教会である。3大建築の巨匠と称えられるフランク・ロイド・ライトの偉業を継いだケンドリック・ケロッグが創生した誓いの場は神秘的でありながら慈しみにあふれ自ずと敬虔な気持ちに立ち返ることができる。祭壇も十字架もないこの教会は形式にとらわれないふたりの誓いにふさわしい ・・・ ウェブサイトに記載された石の教会の説明をここまで読んで、最近読んだ宗教学者中沢新一の「対称性人類学」のことに思いが至った。
 主題の論旨は割愛させてもらうが、ここでの趣旨は以下のことである。
 原始以来、こころの奥底に抑圧され封じ込められている人類の「無意識世界」を庭園における造形として表現するおいて、西欧では庭の一隅に「地下洞窟」を設けるのに対し、日本では竜安寺に代表されるごとく無彩の砂と石を配した「石庭」をもってするという相違点についてである。
 なるほど、この石の教会を眺めていると西欧人の無意識世界の構造をかいま見るようで納得がいく。さらには神秘体験に裏打されたジョルジュ・バタイユ(フランスの思想家)の「至高性」や、そのバタイユに影響を受けた芸術家、岡本太郎が描こうとした「縄文的呪術世界」の様相が教会の周囲からあたかも陽炎のごとく沸き立ち天空に向かって立ちのぼっているかのように感じられる。
2011.2

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