Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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不確定なこころの時代〜さまよえる大衆心理
 求めるものが曖昧な世界が広がっている。 かってのように人々が求めるものが一律であることは少ない。 大衆の心は今、気ままにうつろっている。 このような社会にあって経済を成長させることは至難の業である。
 いくら情報社会だからといって ・・ いくら広告媒体が増えたからといって ・・ いくら広告技術が進化したからといって ・・・ 大衆心理の不確定性をとらえることはできない。 問題は大衆心理の不確定性そのものにある。 大衆の不確定性とは、すなわち社会の不確定性そのものであり、しかしてその不確定性の原因は「エントロピの増大」である。
 エントロピの増大とは「時間の経過ととも非可逆的にエントロピが増大していく」とする熱力学の基本法則である。 科学的説明は割愛するが、簡潔に言えばエントロピとは「ある種の曖昧量」であり、その曖昧量が時間の経過とともに増大していくことを意味している。 つまり、社会の様相は時間の経過とともに、ますます曖昧に、不規則的となり、「不確定性に支配されていく」ことになる。 ここでいう時間の経過とは定常的な時間概念ではなく、物事の変化率、つまり、物事の反応速度と規定される。 いうなれば物事がゆっくり変化する時代よりも、急速に変化する時代のほうが、よりエントロピは増大する。
 承知のごとく、現代社会は物事が急速に変化する時代であり、ともなって社会の不確定性もまた急速に進展する。 このような不確定性に対し、従来のような認識をもって経済成長を企画しても効果は期待できないであろう。 それはエントロピが増大した自然環境がもたらした予測不能な異常気象を有効にコントロールできなくなっている昨今の状況を考えれば容易に了解されるであろう。
 今求められるものとは、社会と大衆の不確定性に基づいた「あらたな成長戦略」である。 その戦略がいかなるものかは熟考を要する。 なにしろ相手は宇宙自然界の運行を司る基本法則なのである。

2015.07.21


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