Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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のこされた活動
 近代化された国々にとって残された生産活動とは「投資活動」なのであろうか・・? 活況を呈する株式市場の様相はその結果なのであろうか・・? 人間の労働活動の大半が機械化され、思考活動の大半がコンピュータ化された現在、あるいはその投資活動のみが「唯一の人間活動」なのかもしれない。
 だが投資活動と言っても「資本主義が終焉」したと言われる昨今においてはかっての様相とは異なり状況ははなはだ曖昧である。それは投資というより限りなく「ギャンブル」に近い活動であり、ともなって経済市場はさながら「カジノのような風貌」を呈する。カジノ化した投資市場では24時間昼夜をわかたず激しい攻防戦が繰り広げられる。ここでも主役はやはりコンピュータである。
 投資の判断は人間の思考能力をはるかに超える超高速で行われる。東証の売買システムの処理速度は900マイクロ秒(1万分の9秒)と言われる。(これもすでに過去のデータとなっているであろうが)とてもではないが人間の思考が追いつける速度ではない。パソコン画面で現在の値段情報を見て売買注文を出しても、その値段は見ている段階で、すでに「過去の値段」になっているのである。こと短期売買においては、トレーダーが場の売り買いの状況を見て「さやを抜く」ような従来の取引はもはや通用しない。今や数学者が作ったプログラムで、コンピュータが勝手に売買するような取引が主流となっているのである。
 これでは人間がコンピュータを相手に「同時(リアルタイム)」に勝負したのでは歯が立たない。チャンスがあるとすれば事前に勝負することである。事前に値動きを予測して売買注文を入れておけば、いくらコンピュータが速くても「時間を超える」ことはできない。重要なことは事前の予測である。コンピュータの能力がいくら優れていても、事前に未来を予測することは現段階でもできていない。それは複雑系の世界を描いたカオス理論が証明するところである。人間にとって過去を振り返って分析し反省することは大切なことではあるが、より大切なことは「未来を予測する」ことにある。

2015.04.02


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