Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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知らない宇宙は存在しない
 ある日、宇宙の彼方に向けて望遠鏡を覗いていた天文学者が何もないと思っていた宇宙領域に見慣れない星雲を見つける。そのとき宇宙はその星雲の周辺まで広がったのである。換言すればそこに宇宙は存在するのである。一挙に還元すれば、存在とは我々が知るか知らないかにかかっている。私がその人を知らなければ、その人は宇宙に存在しないということである。

 以上のことは、シュレジンガーの波動理論でいう「観測問題」を分かり易い例として述べたものである。波動方程式に従って述べれば「波動関数の収縮」という難解な表現となる。あるものを観測すると波動方程式の波動関数が収縮して「ひとつの宇宙」が発生する。

 ひるがって考えれば、情報社会とはさまざまな観測にことかかない社会である。波動関数は次々に収縮し、ともなって新たな宇宙が次々に発生する。情報社会では時間の速度が急速に上昇し、空間の喧噪度が急速に上昇するのはこのためである。ゆっくり生きたい人にとっては知りたくない情報を知らされるのは「よけいなお節介」ということになろうが、情報化の波はそれを許してはくれない。依って時計の針はさらに目まぐるしく回転し、世相の混沌はますますその度合いを深めていくことになる。
2013.12.17

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