Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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悠々自適とは
 先日、友人との歓談の中で「悠々自適」の話になった。60歳を過ぎて定年を迎える年齢になるとこの理想の老後生活をあらわすライフスタイルイメージが登場する。信州にはこの理想のライフスタイルを実現しようと都会から多くの熟年者がやってくる。高原に居住するもの、山麓に居住するものさまざまである。その誰もが「悠々自適」を自認し、幸せそうなのであるが、その風情はどこか装っているようで、なぜか寂しそうなのである。
 撮影で訪れた静かな湖畔の散歩道ですれ違った子犬を伴った夫人のかくなる「寂しげな風情」を話すと、寂しげなではなく「憂いにみちた表情で・・」と表現の訂正を求められた。彼はまだ「悠々自適」に若干の夢を描いているのである。寂しいは情緒であり、憂いは深い精神性であるというわけである。いずれにしても「悠々自適」とは、思い描くうちは夢と希望にみちた「愉しきライフスタイル」なのであるが、実現すると寂しさと憂いにみちた「哀しきライフスタイル」へと変じるもののようである。
2013.03.08

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