Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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未来の発生
 現代量子物理学では「観測問題」と呼ばれる概念が重要な役割を担っている。それは宇宙自然界を規定するシュレジンガーの波動方程式に出てくる「波動関数」の収縮問題としてとらえられる。簡潔に断言すれば波動関数の収縮とは「あるものを観測することによって新たな宇宙が発生する」ことである。これを逆に論じれば「観測されない宇宙は存在しない」ということになる。宇宙空間の局所で新たな星が観測されることで宇宙は「そこまで拡大」する。換言すれば「新たな宇宙が発生」する。と同時に、その星が観測されるまでは、そこには宇宙は存在しない。「観測によって発生する宇宙」と「選択によって制作される未来」は互いに強い相似性を漂わせている。

 光は「粒子性」と「波動性」という2つの性質をもっているが、同時に2つの性質を観測することはできない。粒子性を観測した瞬間に波動性は消え、波動性を観測した瞬間に粒子性は消えてしまう。この場合の観測とは選択でもある。またハイゼンベルクの不確定性原理でも同様に、ある粒子の「運動量」と「位置」を同時に正確に知ることができない。この場合の観測もまた選択である。いずれかを選択して観測しなければ「新たな宇宙は発生しない」ということであり、それはAとBの選択肢からいずれかを選択しなければ「新たな未来は制作されない」という構図と等価である。

 等価原理を使って宇宙と未来を意味付ければ、「新たな宇宙の制作とは何かを選択する」ことであり、「新たな未来の発生とは何かを観測する」ことであると変換される。この認識転換は両者のアプローチに多大な示唆を与えてくれる。言うなれば「犬も歩けば棒に当たる」とは、新たな未来の発生を示唆しているのである。未来は選択肢を想起しその選択肢を選択することによってのみ制作されるのではなく、この世界(宇宙)のどこかで(局所)何かを見つけても(観測)制作されるのである。つまり、犬は「未来を発見」したのである。
2012.10.03

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