Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

現代金融事情

 金融とは「お金の貸し借り」であるが、機能を突き詰めると「時間の貸し借り」に帰着する。つまり、お金を借りるとは、時間を借りることに他ならない。

 だが最近の金融は、貸したお金の回収期間が短い。
 回収期間が「短い」とは、結局、時間を「貸さない」ことに等しい。

 回収期間が短い「融資」とは、つまりはお金の「融通」でしかなく、明日に入金予定のお金のために、今日のお金を借りることに過ぎない。

 このような金融では新たな事業は興るべくもない。

 時間をかけない事業とは、いったいいかなる事業であるか・・?
 今日借りて、明日返すお金で可能な事業とは、いったいいかなる事業であるか・・?

 朝に買った株を、昼には売り抜け、わずかな差益を稼ぐ「デイトレード」のようなビジネスモデルが思い浮かぶが・・・かようなデイトレーディングを「事業」と呼ぶか、はたまた「賭博」と呼ぶかは、判断の分かれるところである。

 かような金融政策が継続されるならば、世は「インスタント事業」ばかりとなってしまう。

 IT経済の目指すところが、このような軽薄短小な価値観で覆われた社会だとすれば、それはいかにも「悲しい現実」である。

2005.10.20

copyright © Squarenet