Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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この世のことはこの世に聞く

 株式投資の世界で定常的に儲けをだせる人の数は「全体の5%程度」であり、それは現実社会での成功者の割合と「ほぼ同じ」である。

 それは株式市場と現実社会の構造が「相似的な世界」であって、勝利者へのメカニズムもまた「相似的フラクタル構造(入れ子構造)」となっていることの証左である。

 5%の割合の意味するところは、勝利に向けて画策される「全体の趨勢」は、そのほとんどが(95%)「間違っている」という「事実」である。

 相場の世界でよく知られる格言、「人の行く裏に道あり花の山」は、かかるメカニズムの様相を明瞭に語っている。
 つまり、全体の趨勢に従っていては「勝てない」ということである。

 また経済学者だからといって株式投資で勝てるものではなく、経営学者だからといって企業経営に成功するものでもない。

 経済学者はスタティック(静的)な「起きてしまった」株式市場の大暴落をもののみごとに分析し、そのメカニズムを解明してみせるが、だからといってアクティブ(動的)な、現在「起きつつある」株式市場の大暴落を事前に予知することができるわけではない。
 同様に、経営学者はスタティック(静的)な「起きてしまった」経営の破綻をもののみごとに分析し、そのメカニズムを解明してみせるが、だからといってアクティブ(動的)な、現在「起きつつある」経営の破綻を事前に予知することができるわけでもない。

 彼らは「起きてしまった現実を説明する」ことにおいては「すこぶる能弁」であるが、「起きつつある現実を予知する」ことにおいては「まったくもって寡黙」である。

 さらに相場の世界には「相場のことは相場に聞け」という格言がある。これを現実社会に転用すれば「この世のことはこの世に聞け」となる。

 ひとときもとどまらず生々流転し、今まさに胎動するアクティブ(動的)な現実世界へのアプローチは、虚心坦懐、静かに「この世の声に耳を傾ける」以外に、他に「手立て」はないようである・・・。

2005.5.13

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