Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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イバラードの奇妙な店

 画家井上直久氏の絵本「イバラードの旅」の中に奇妙な店が登場する。(井上直久氏とは、かつて氏が松本市を訪れた際、この奇妙な店のことについて話したことがある)

・・・イバラートとは井上氏の意識世界の中にある理想郷であり・・そのイバラードの市場に、その奇妙な店はある・・店の入り口には「夜空屋(あなたが探している場所はこちらです、どうぞお入り下さい)」という看板がさげられている・・その店の入り口を入ってみると、そこは広い草原である・・振り返って、いまくぐった入り口を見ると、今度は逆にイバラードの市場が、その店の入り口の向こう側に、つまり店の中にある・・店の入り口には「市場屋(あなたの探しているものはこちらにあります、どうぞお入りください)」という看板がさげられている・・・

 我々は常日頃、「裏と表」という言葉を口にするが、その裏と表の構造をしかと理解し得た人が、どのくらいいるのであろうか・・?

 井上氏が提示する裏表の構造とは、表の世界の「外側」に裏の世界が在り、裏の世界の「外側」に表の世界が在るような構造である。

 一般に我々が考える裏表とは、一枚の紙の表裏のような構造であるが、井上氏が提示する裏表の世界は、ちょうどゴムボールの内側と外側の構造に近い。
 ただ異なるのはそのゴムボールの曲率が内側、外側ともに内側に曲がっていることである。そのようなゴムボールを図に描くことは難しいが、そのゴムボールが天文学的に大きいことを想定すれば、非ユークリッド幾何学(つまり、平行線は交わるという幾何学)が適用されるから、そのようなゴムボールも在りうる。
 つまり、ゴムボールの内側も外側も、ともに同じ内側に曲がっているようなゴムボールである。

 この構造をわかりやすく述べれば、壁に取り付けられた鏡を、その入り口(門)であると想起すればよい。鏡の門では実際には出入りはできないが、もしその鏡の門から自由に出入りできると考えれば、井上氏が提示したイバラードの奇妙な店の入り口(門)と同じ構造である。

 このイバラードの門における、直観的インスピレーションは象徴的であり、また暗示的示唆に富んでいる。

 その門とは、言うなれば「生と死の門」であり・・「有と無の門」であり・・「男と女の門」であり・・「精神と物質の門」であり・・あらゆるPairpoleの門の構造である。

 そしてはたして・・私は・・あなたは・・いったいその門のどちら側の世界に今いるのであろうか・・・。

2004.4.14

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