Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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個別宇宙から全体宇宙へ
 宇宙は個別宇宙と全体宇宙で構成され、個別宇宙から全体宇宙へ、全体宇宙から個別宇宙へと、双方向往来がなされる構造をもっている。そして、その双方向往来を可能にするスペースシャトルの機能が、意識者としての「観測行為」である。

 げに宇宙を「観測する(知る)」ことは、真に重要なことである。

 21世紀をむかえ、時代は形ある物質を基準とした物的社会から、形なき情報を基準とする情報社会に移行しようとしている。前項で述べた受験生の合格発表の結果情報などは、今やいかなる場所からもたちどころに「観測する(知る)」ことが可能である。

 宇宙の局所(片隅の世界)で現出した個別宇宙のさまざまな情報は、今やたちどころに全体宇宙が「観測する(知る)」ことが可能となったのである。

 以上の状況は、宇宙局所の片隅世界に現出していた我々自身の個別宇宙がしだいに消失し、代わってその片隅世界を全体宇宙が占領していくことを意味している。
 つまり、時空間は同一化して均一性をおびてくる。空間の湾曲は消滅し(あらゆる方向で等質)、時間の伸縮も消滅する(あらゆる場所で時間経過は同じ)。

 ミステリアスな浦島太郎伝説の寓話は、さらにまったくの過去物語に化す。

 象徴的に言えば、我々人間が永々と個別に付帯してきた千差万別の個性をしだいに消失させ、金太郎飴のように、どこを切っても同じ顔が顕れるようになる。

 情報社会の行着くところは、まことにもって無味乾燥な味気ない世界のように思われてくる・・。

2004.2.04

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