Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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宇宙の道徳規範
 過去も未来も「現在」に含まれている。
 昨日の私は、今日の私に含まれ、明日の私は、今日の私に含まれている。

 全体宇宙としての可能性の海である暗在系から、明在系である現実宇宙として実在化した「現在」という空間は、一瞬も留まることなく千変万化する「刹那宇宙」である。

 換言すれば、現在という空間は、常に「可能性のゆらぎ状態」の中にある。諸行は無常であり、万物は流転するのである。

 この可能性の明滅にゆらぐ現在という空間に、もし確固たる永遠の真理があるとするならば、「あらゆる確固たる真理は、確固たる真理でない」という真理である。

 あらゆる確かなことは、いずれ不確かなことに変化する。栄枯盛衰は歴史の必然であり、盛者必衰は歴史の理である。

 人間社会は、時代が創った「道徳規範」によってコントロールされているが、この道徳規範もまた、唯一確固たるものではない。全体宇宙である可能性の海には、人間意識が考えられる限りの、あらゆる可能性が含まれている。現実世界として実在化しうる、無限の許容量を、その可能性の海は内蔵しているのである。

 現在の道徳規範を、我々は、唯一絶対の教条のごとく考え、それに束縛されてしまうが、全体宇宙は、それを唯一絶対とは、規定していない。その道徳規範は、ほんの一例でしかないことを規定する。

 宇宙が規定する道徳規範とは、善と悪、正と誤、大と小、増と減、美と醜、あれとこれ・・等々、「ペアポールの狭間」の空間で、可能性のゆらぎに明滅する、その「無常性」のみである。

2003.6.26

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