Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

黄金の国ジパングの終焉
 かってシルクロードを旅したマルコポーロは当時の日本を称して黄金の国「ジパング」と彼の旅行記である東方見聞録に記した。

 彼が称したごとく、まさに現代の日本は黄金ならず「お金の国」である。黄金がお金を意味するのであれば、まさしく彼が言ったことは正しかったことになる。
 当時の西欧世界から見た黄金の国「ジパング」は理想郷であり、永遠の桃源郷に思えたことであろう。

 しかしながら、現在その黄金の国に住む我々日本人はその理想郷とはほど遠い困窮の生活をよぎなくされている。確かに日本人の貯蓄総額1400兆円は世界においても莫大な富の集積に値しよう。
 だがその「黄金」をもってしても、豊かになれないとはいったい何としたことであろうか。

 この黄金は本当に黄金なのであろうか・・?

 日本の貯蓄総額1400兆円とは円という「通貨」であり、それは国家という「信用」の上に成立している「信用貨幣」の総額である。
 今や日本国の国家基盤は脆弱化し。その信用もゆらいでいる。極論すれば、いつ「紙屑」になっても不思議ではないのである。まして現代の世界経済は国境の無いボーダーレス経済であり、日本の通貨である円は国際社会の状況によって日々価値が上下変動する。

 これらの状況を鑑みるならば、日本の1400兆円の「お金」などは黄金とは言えず、風前の灯火のごとくに危うい、仮想的黄金なのではあるまいか・・?

 現在の国際情勢といえば、気の荒い強盗団国家や、貧富の格差が拡大したことによる難民国家が乱立する状況を呈している。いつなんどき、ピストルをもった世界の強盗団に脅されて「それは紙屑です」と言わされるはめに陥るかわかったものではない。
 幸運にも日本は海に囲まれた極東の片隅に位置する島国であったために、今まではこれらの「強盗」や「難民」に無縁であったにすぎない。また、この地勢的幸運こそが日本が長く「一国平和主義」を貫くことができた理由でもある。
 だが、このような幸運は世界各国の歴史に照らし合わせてみれば、非常に特殊な状況であったと考えなければならず、今後はこれらの強盗団国家や難民国家が乱立する厳しい国際社会の中で、日本がいかに対応していくのかが急務の問題となる。

 しかるに、現在の日本の国情は欲と権力にぼけた、およそ歴史観も哲学性もないアルツハイマー状態の政治家に率いられて、いまだに黄金の国「ジパング」の虚構を追い求めている。彼らは何かと言えば「景気回復」、「損失補填」、「公共投資」・・等々、すべては「お金」を基本にした政策ばかりを口にし、国民に向けて、はばかることなく国債という名の「借金」を際限もなく乱発し続けている。
 世界各国もこの日本の「ぼけ具合」を知ってか知らずか、それに呼応するようにその政策を支持し、さらに日本はもっとお金を使え、世界の軍事的危機に資金援助すべきだ・・等々と、その「お金」の供出を迫る。
 また隣国、北朝鮮の「暴力息子」が向けた「テポドン」と言うふるった名前の性能劣悪でどこに落ちるのかもわからないようなミサイルを使った「火遊び」に脅されて、右往左往しているのが、悲しいかな「日本の実情」である。まったくもって「冗談ではない」のである。

 かって私はこのような日本の実情を称して「日本はカモネギである」と言った。次には「日本はカモがネギを背負って歩いている」と言った。さらに次には「日本はカモがネギを背負って鍋をもって歩いている」と言い。最近は「日本はカモがネギとともに鍋に入っている」と言っている。
 しかし、この「ぼけ具合」が改善されないと、やがては「日本はカモがネギとともに鍋に入り水を注がれ火を付けられるのを待っている」となり、さらには「日本はカモ鍋になり食べられてしまった」となる。

 黄金の国ジパングの「終焉」である。

2002.12.13

copyright © Squarenet