Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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意識の抗体
 最近新聞紙面をにぎわせている臓器移植医療の最大の難関は生体の「拒否反応」である。

 現在、医学がとらえている拒否反応とは生化学的な拒否反応であが、この拒否反応は心理学的な意識的拒否反応とも考えられる。

 生化学的な拒否反応とは異物の人体への侵入に対して作用する、リンパ節における遺伝子組みかえ機能により創りだされる免疫的抗体が、侵入異物がおよぼす人体に対する障害を阻止し、安全に保護しようとする反応である。

 この抗体生成機能こそ、生物における最も偉大で、かつ最も腕のいい医師である。

 臓器移植とは、言うなれば人体へのこの異物侵入と等価であり、この偉大で腕のいい医師(抗体)が即座にこの異物(移植臓器)に対応し、これを体外へ排除しようとする。
 これが臓器移植医療における難問、拒否反応である。

 これに対処して臓器移植を成功させるためには免疫降下剤を投与し、この抗体生成作用をにぶらせなければならない。
 分かり易く言えば、この偉大で腕のいい医師にウイスキーを飲ませ、酔わせてしまおうということである。

 この状況を心理学的な意識的拒否反応として考えてみる。

 移植される臓器に付帯した他者としての異質な意識が、移植される患者の意識へ侵入すると、患者の意識が心理学的な免疫的意識抗体を創りだし、この侵入異質意識を排除しようとする。
 もし人体がこのような意識抗体により、日常における人間活動意識を安全に保護しているとするならば、それは生化学的な抗体と等価であり得る。

 臓器移植医療においては生化学的な免疫降下剤を投与するだけではなく、心理学的な意識的免疫降下療法も同時に施すことも考えられてもよい。
 換言すれば、それは移植する側と移植される側の「意識協調療法」であり、さらに言えば両者の意識を適応させるための「意識カウンセリング療法」である。

 これもまた物質と意識のPairpoleから導かれる帰結である。

2002.11.13

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